修復の一環
欠落寸前の箇所の固着作業
古画によく見られる、水漏れ、水害などの原因で表具裂地の色が溶けて本紙に移ってしまった「移染」という色移り現象で、この場合は通常の水としみ抜き薬剤が効きません。そして、古軸の「移染」の場合は、よく本紙を通して、古軸の裏の総裏紙まで深く滲透し、なかなか除去するのに困難を極めるので、多くの作業者がそのまま放置するか、或は色塗布によって処置されます。しかし、表の色塗布は原画の画風を損うので、お薦めできません。当工房の場合は「移染」箇所周囲の絵の具(金箔、金泥等)の成分に悪影響を与える化和現象をさせないよう、その都度、独自に除去還元剤を調和して、最大の注意を払って除去作業を行います
(1)原古画の古意を損なわないよう最小限に施す。
(2)原画絵師の作風を徹底的に研究し、迫真に再現する。
(3)最大限に原画と同じ材質で作業する。
●原古画に最も近い顔料の種類、粒子、色相などを選定することは 補彩の基本。 ●時には古色(時代色)を出すため、岩絵の具(天然のみ)を焼いて、 補彩を行うこともある。